ウェス・アンダーソン「犬ヶ島」 雑感

上映期間に滑り込みでウェス・アンダーソン監督の映画「犬ヶ島」を見てきました。
近未来の日本を舞台にした少年と犬たちの物語で、ストーリーは王道ながらも丁寧に作られていて、ありそうでない架空の日本の見せ方が面白い作品でした。
これから何回も見返したいと思うくらい良かったです。

フランス人家族からのオススメ

元々この映画を観ようと思ったきっかけは、以前カウチサーフィンでうちに泊まっていったフランス人家族からのメッセージでした。
「日本が舞台になっているアメリカの映画がすごく良かったから観てみて」と言われ、日本が舞台でアメリカ???となりましたが、調べて無事公式サイトにたどり着けました。

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作中の日本語がすごい

映画の英語名は Isle of Dogs ですが、最初に公式サイトを見たときに「犬ヶ島」と漢字の表題が出てきたので、私はてっきり「これは日本語向けに特別に作ったタイトルデザインかな?」と思っていました。

…が、今回映画を見て、元々タイトルは「犬ヶ島」と«日本語»で書かれていたことがわかりました。
この映画の一番すごいところは日本語をやりきっているところだと思います。街の看板や壁の落書きも日本語、書類も日本語、最後のクレジットも日本語表記がありました。
しかも細かいところまで出てくる日本語にほとんど間違いがなく、日本の制作会社が作った映画かと錯覚しそうになるくらいのこまやかさ。

普通、日本に限らず違う国のことを題材にした作品というのは、「それっぽい」表現にとどまることが多いと思います。
ちょっとした言い回しだったり、フォントが見慣れないものだったり、ネイティブが見るととにかく違和感を感じるものですが、今回の「犬ヶ島」にはほとんどそれがありませんでした。

神社の拝礼の仕方などもきちんとしています。
唯一違和感があったのが刺し身の切り方と寿司の握り方が全然違うという点でしたが、まあ今じゃなくて近未来の日本だしいいか、と考えることにしました(笑)

とにかくこの細かな部分まで設定が追求されているのはなかなかできることではなく、とても素晴らしいと思いましたし、これがウェス・アンダーソンの仕事か…!と感動しました。

日本語を解する人だけが分かり得る特権と落とし穴

作中では人間が日本人設定の場合は日本語を喋り、アメリカ人は英語、犬も英語です。(ただしアメリカ人と犬が意思疎通できるわけではない模様)

日本語のセリフは英語の字幕を入れたり、通訳という形で英語が後から話されたりと、2つの言語が自然に交わって違和感のない作りになっていました。
このあたりの工夫もとても良かったです。
また日本語が分かる人にとってはより深く楽しめるので、ちょっとお得だなあと思いながら見ていたのですが、逆に言うと本来あるはずの違和感を楽しめないという落とし穴もあるなと思いました。

もし日本語がわからない方がこの映画を見た場合、日本人は「よくわからない言葉をしゃべる理解しがたい人たち」となり、犬は「人間らしい生き生きとした、親近感のわくキャラクター」となるのではないかと思います。

本来であれば観客は犬の気持ちに寄り添うはずで、捨てられる犬たち、たくましく生きる犬たちを自分たちに置き換えて考えるということもあるかもしれません。しかし日本語がわかってしまうと日本人の方にも寄り添ってしまうので、人は人、犬は犬となってしまい、本来の意図からはちょっと外れた見方になってしまっている気がします。

しかし、作中には何でもないところに日本語がよく出てきますし、その声はオノ・ヨーコさんだったり、RADWIMPSの野田洋次郎さんだったりと、かなり豪華ですので、日本語を解する人にとって楽しい作品であることには間違いないと思います。

猫が悪役

ちなみにこの映画の主役は犬とアタリ少年であり、猫は思いっきり悪役です(汗)なので猫好きの方にとってはちょっと悲しくなるかもしれません。
私も犬よりは猫派なので、ちょっと残念でしたw

まあそんな部分を差し置いてもとても満足できる映画です。
DVDが出たらぜひ繰り返し見て、細かい部分をもっと楽しみたいと思うような素敵な作品でした。

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