プロジェクト・ヘイル・メアリー 雑感

Twitterで評判が良さそうだったので読んでみたもの。
以下、ネタバレというか、読んだ人しかわからない内容ばかりです。


宇宙船に一人で目が覚めた地球人が、地球を救うために試行錯誤し、なんと宇宙人とのコミュニケーションまで取って一緒に問題解決してしまうという、あらすじだけ聞くと「そんなんできんの!?!?」という感じのストーリーではあるんだけど、主人公の科学者としての姿勢と知性とすっとぼけたユーモアでそこらへんの説得力を持たせている。
まともな人間は宇宙人にロッキーと名付け、更に彼の妻たる名前をエイドリアンとしたりはしないんじゃないだろうか。
まあ宇宙船の一部の名前もビートルズだから、科学者的にはそんなもんなのかもしれない。

いろんなリスクに直面しながら地球人と異星人がそれぞれ自分の星が生き残るために協力して解決していくというストーリーで、「次に起こる問題はなに!?」と気を揉みながらも、それほどのストレスはなく、すいすい読める。
あんまり感情に起因するネガティブなことがないし、それでいて課題解決までの時間は限られてるので、立ち止まらずに読めるんですね。
多分それは主人公と異星人の善性と孤独の凄まじさによるものだと思う。

なんかこう、ふたりともものすごくえらい。がんばってる。
ここから何光年も離れて、もう存在もわからない、今すでに破滅しかかってるかもしれない地球と異星人の星を救うために。
一人の地球人と、一人の異星人だけで。

普通、そんな事できる?と思ってしまうくらいに人がいい。
そんなことしなくても、快適な宇宙船のなかで死ぬまでゆっくり過ごせばいいのに。

それでも彼らは協業し、科学し、工作し、チャレンジし、達成する。
ときには互いの星のために自分の命を投げうったりもする。


ふたりとも、とても善い性質でえらいなあと思うし、同時に、そうしなければやっていられないほど孤独で寂しい状態なんだろうなとも思う。
地球人は一人だったら狂ってたと思うし、異星人に会えて、しかもその異星人が善い性質だったから、結果的に互いの善性を高めあって協力できたということなんでしょうね。
あと地球人と異星人という異文化すぎる二人なので、そのギャップが大きすぎて文化的衝突が起こらない(そういうもんかと受け入れるしかない)というのもいいんだと思う。
とてもいいコンビ。

あと地球人の主人公がこんなに善い性質なのは、もしかしたら人工的に操作されてる可能性もあるのかなあと思ったり。
宇宙船に乗せる前にマインドコントロールしたり、やり方は色々ありそうなので、プロジェクトを成功させやすい偽の人格、偽の記憶を与えられている可能性もあるんじゃないかな。

物語のラストで、地球人は地球に帰ることなく、それでも充実した余生を送っている。
彼がプロジェクト・ヘイル・メアリーに関わる前と(環境は違うけども)同じような生活を取り戻している。

地球は星としては助かったけれど、そこに暮らす地球人がどんな状態かはわからない。
何億人かを失いながらも再建できているのか、それとも残ったパイを奪い合って数を減らしているのか、もしくはもういないのか。
異星人たちは地球の情報をきちんと彼に伝えているのかも謎ですが。(彼に希望を与えたくて「地球が前の状態に戻った」と伝えただけの可能性もあるし)

もし地球に人が残っていたとしても彼らは大きな混乱の中にいるわけで、
彼だけが唯一、地球にはいないけれど人生を取り戻しているというのは、やっぱりその善性の応報なんでしょうかね。

もし彼が宇宙にたった一人だけ残った地球人だったとしても、彼が幸せに生き、そして死んでも彼の子どもたち(教え子たち)が生き続けていくということで、いいエンドだと思う。

プロジェクト・ヘイル・メアリー(上)
プロジェクト・ヘイル・メアリー(下)

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