目を見たい人、口元を見たい人。

最近、ドイツのバイエルン州で「州内の公共施設の入口にキリスト教の十字架を掲げる」という政令が発表されたことが話題になりました。

公共施設に十字架掲げよ、独バイエルン州の新政令めぐり物議http://www.afpbb.com/articles/-/3172621

バイエルン州の首相は十字架は信仰の対象としてではなくドイツ人の文化の一つとして掲げられると言っているそうですが、日本に住む身としては現地の方と難民の方の対立や、ムスリムに対する圧力など、様々な事があるのかなと考えてしまいました。

日本ではヨーロッパの難民のニュースもあまり聞かれなくなりましたが、問題がすっかりなくなったわけではないと思います。
特にバイエルン州は良く言えばドイツらしさの残る州ですので、元々の文化を守りたい方と、自分の習慣や文化を崩したくない方の間での食い違いが起きやすいかもしれません。

フランスのブルカ禁止法

ムスリムの方への圧力のような決まりと聞いて思い出すのが、2011年にフランスで施行された「ブルカ禁止法」です。

フランスでは公共の場で顔のすべてを覆うベールを着用することが禁じられていて、違反者には150ユーロの罰金が課されるとのこと。
これはムスリムの女性への差別なのか、はたまた女性を管理するような服装規定から女性たちを開放するものなのか、当時も色々な議論がありました。

もう施行されて7年経ちますが、実際のところどうなっているのかなと気になっています。
以前ドイツに行ったときは、ブルカ(目も隠れている布)の方は見ませんでしたが、ベルリンでもミュンヘンでも、スーパーや道端でアバヤ(目は出した状態で体全体を覆う黒い布)を来た女性はちらほら見かけました。オーストリアの氷の洞窟「アイスリーゼンヴェルト」に行ったときもアバヤ姿で山を登る女性の団体を見かけて、「すごい!徹底してるな〜」とのんきに思ったものです。

オーストリアでも去年の10月にブルカ禁止法が施行されているようなので、今ではもうアバヤで洞窟探検をする方もいないのでしょう。

ブルカ禁止法、オーストリアでも施行──欧州全体を覆う「極右プロパガンダ」の影響https://wired.jp/2017/10/04/austria-just-slapped-a-burqa-ban/

顔のどこを隠すのがNG?

このブルカ禁止法のことを聞いたときに、最初に感じたのは「意外だな」ということでした。
まず、私がドイツなどを旅行して感じたことに一つに、「ヨーロッパでは日本より他人の格好などを気にする意識が少ない」という事がありました。
このため、他の人の格好なんて気にしない人たちだと思ってたのになぜ?という違和感があったのです。

格好に加えて、人の顔色を伺うということも少ない人達だと思っていたので、他の人の顔がどうなっていてもいいんじゃないの?なんでそんなこと気にするの?と不思議だったのです。

もちろん一部の過激なイスラム信仰者への恐れ、テロへの恐れ、民族主義の回帰傾向も大きな理由だったのではないかと思いますが、最近アメリカ人の方と話していて、人によっては「頬から口元を隠す人への警戒心」があるのではないかと気付きました。

もちろん個人によって違いはあると思うのですが、そのアメリカ人の方は日本人のマスクや、イスラム教の方の服装のように「頬から口元が隠れていて、目だけが見えている状態」に違和感を感じると言っていました。その状態の人が何を考えているのかわからなくて警戒してしまう、というのです。

私はその方と逆で、白人の方のサングラスのように、「目が隠れている状態」だと何を考えているのかわからないと思ってしまいます。もちろん白人の方は光を感じやすく目を傷めやすいのでサングラスが必要なのだと思います。
ただマスクとサングラス、どちらかであればマスクの方のほうが面と向かって意思疎通をしやすいように、私は感じるのです。

よくヨーロッパなどに旅行に行くときにマスクをしているのは奇異に見られると聞きますが、それはそんな認識の違いも一つの理由かもしれませんね。

また、その方は「日本に長く暮らしていると、サングラスをすることが気取っていて、マスクをすることが気遣いであると感じるようにもなる」とも言っていました。
同じ人間でも、個人によってまたは文化によって「顔のどこが隠されているのがNGなのか」が違うというのは面白いことだなと思いました。

しかし実際にフランスに暮らす方々にとっては「違いが面白い」で済まされることではないでしょうね。
実際に住まわれている方がどういう気持なのか、困っているのか、せいせいしているのか、そんなインタビューがあれば読んでみたいと思います。

また日本人でもマスクや日よけのフェイスカバー、ラッシュガードのような水着など(これはブルキニ禁止法)、ケースによっては地域の法律に引っかかってしまう場合があります。
ブルカ禁止法はヨーロッパの他の国でも導入が検討されているとも聞きます。
「公共の場での服装を法律で禁止される」ということがどういうことなのか、個人が(あるいは文化が)持っている嫌悪感・警戒心はどこまで主張してもいいのか、ムスリムの人たちのことでしょと他人事に思わずに、もっと考えるべきことなのかもしれません。

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